『田園の詩』NO.57  「嫌香権」 (1996.11.12)


 前回に引き続き≪香り≫のことを、もう少し取り上げてみたい。

 以前、ハーブなどの香りの良い草花を育て、それを乾燥させて≪におい袋≫など
(流行の言葉では≪ポプリ≫というのでしょうか)を作っている方と出会いました。
その時、名刺をいただいたのですが、それには相当強く香水がつけられていました。

 初めは「いい香り」と感じたのですが、カード・ホルダーに収めておいても、部屋中
その≪香り≫が漂ってきます。≪香り≫というものは、発生源がそこにある限り常時発散
され続きます。五分間発散して三時間休むという訳にはいきません。

 その部屋で本を読んだり、ワープロ相手に文章を書いたりするのですが、私は長時間
その≪香り≫に晒されることに耐えられなくなりました。

 失礼と思いながらも、名刺を取り出し風通しの良い場所に吊るしました。おまけにカード・
ホルダーも≪移り香≫がして、結局買い換えたのでした。


      
     12月下旬から咲きだすロウバイ(蝋梅)です。このふくよかな香りが写真
      では届けられないのが残念です。  (08.12.29写)


 嫌煙権がいわれだしてもう随分経ちます。狭い場所での集会や会議の時、タバコを吸わ
れると空気が汚れて、タバコを吸わない人は居たたまれなくなります。また、健康上も良く
ないということで、最近は社会的にルールが出来て、禁煙が守られるようになりました。

 ≪香り≫に関していえば、私は密かに、≪嫌香権≫があっても良いのではないかと思って
います。誰でも経験があると思いますが、狭い部屋でニンニクの臭いをプンプンされたらた
まりません。

 同じように、香水もあまり強すぎると却ってはた迷惑になります。もともと香水(化粧品
のにおいも含む)は、好まれる≪良いにおい≫と思われているだけに、心遣いをされる人
(一応≪女性の方≫としておきます)が少ないようです。

 自宅でたっぷり香水を使われて楽しまれてもかまいませんが、外出する時はどうか控え
てほしいものです。どうみても反対のことをしているようにしか思えません。
                           (住職・筆工)

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